契約書

なぜ契約書を作成するのか?

     契約は原則として口約束でも成立します。契約書がなければ契約が成立しない、というわけではありません。
では、なぜ契約書を作成するのでしょうか?
答えは簡単です。後日争いが発生してしまったときに、その紛争を最小限に抑えることができるからです。
口約束だけでは勘違いや「言った言わない」のトラブルも起こりかねません。お互いの信頼関係を保つためにも契約書は必要なのです。

 

契約書を作成するメリット

○トラブルを未然に防ぐ
     口約束だけでは、合意内容を忘れてしまったり、勘違い、思い違いによりトラブルとなることもあります。当事者間で合意した内容を契約書という書面にすることで、当事者が合意内容について共通の認識を持ち、トラブルを未然に防ぐことができます。

○契約の円滑な履行
     当事者がそれぞれ契約上の義務を迷うことなく、より円滑に契約内容を履行することができるようになります。

○取引の安全性の確保
     契約書を作成することでその取引への重要性の認識が高まり、契約内容を遵守しようという責任感が生まれます。また、相手方に契約内容を履行させるためのプレッシャーをかけ、契約違反を防ぐことができます。

○証拠能力の確保
     もし当事者間で訴訟となってしまった場合、口約束だけでは合意した内容を証明することは困難です。訴訟の場において、契約書は最も強力な証拠の一つとなります。取引の合意内容が契約書として書面で作成されていれば、紛争が起きたときの早期解決にもつながります。

 

契約を有効に成立させる要件

① 契約の申込とそれに対する承諾があること
       これにより当事者間の合意が成立します。

② 契約締結能力があること
       契約を締結する者が法的に有効な契約を締結する権限を有しているかどうか。

③ 契約の有効性を否定する事情がないこと
       例えば、詐欺、脅迫、錯誤、公序良俗、取締法違反、書面性の要求を満たさないことなどがあります。

 

     有効な契約の締結によって契約の各当事者は契約内容に法的に拘束されます。裁判で争う場合でも有効な契約は尊重されます。

 

形式上の留意点

① 契約書の綴じ方と割印
       製本されていれば割印は表と裏の2ヶ所で良いが、製本されてない場合には各ページのつなぎ目に割印が必要となります。

② 記名と署名の違い
       契約書の調印は記名か署名により行います。記名とは、ゴム印やパソコンなどで名前を打ち込むことをいいます。署名とは、本人が自筆で氏名を手書きすることをいいます。

③ 実印と認印の違い
       実印とは、居住地の役所へ印鑑登録した印章をいいます。認印は実印以外の印章をいいます。実印が押印されていると本人が押印したと推定され、証拠能力が高いとされています。

 

契約書の一般条項と例文

「一般条項」とはどの種類の契約書にも登場する条項のことです。例えば以下のようなものがあります。

 

① 契約期間

     契約期間の定め及びその更新方法を規定するものです。契約期間が満了してしまい契約期間の延長や更新を失念すると無契約状態になってしまうので、これを避けるため下記例文のように「自動更新」の定めを入れる場合が多いです。

【例文】
第○条(契約期間)
本契約の契約期間は平成○年○月○日から平成○年○月○日までの○年間とする。但し、その期間満了の6ヶ月前までに甲乙双方どちらかの申し出がなかったときは、本契約は同一条件をもってさらに○年間、自動的に更新されるものとし、その後も同様とする。

 

② 解除事由

     一方当事者に契約を継続しがたい事由が発生した場合、他方当事者に解除権を与えることで、不当な拘束から解放してもらうことができます。 あらかじめ、解除できる場合を契約書で決めておけば、解除の有効性を巡る紛争の防止に役立ちます。

【例文】
第○条(契約の解除)
甲又は乙に次の各号の一つにでも該当すべき事実があったときは、相手方は何らの催告を要せずして直ちに本契約を解除することができるものとする。
(1)自己振出の手形又は小切手を不渡りとしたとき。
(2)代金の支払を2ヶ月分以上怠ったとき。
(3)解散、破産、民事再生、社会更生等の申立を受け又は申し立てたとき。
(4)強制執行、競売の申立、保全処分、滞納処分等を受けたとき。
(5)租税公課の滞納処分を受けたとき。
(6)その他本契約に違反したとき。

 

③ 期限の利益の喪失

     解除権の行使による契約の終了時に、その時点で未払いの債務はすべて期限の利益を失い(期限まで待ってもらえずに)その時点で支払わなければなりません。

【例文】
第○条(期限の利益喪失)
甲乙いずれか一方について、前条各号の事由が生じた場合には、該当当事者は、相手方に対する金銭債務につき当然に期限の利益を失い、直ちに相手方に対し残債務全額を弁済するものとする。

 

④ 損害賠償の制限

     損害賠償の規定が当事者間で何も設けられていない場合、民法では上限が定められていないため無制限に損害賠償責任を負うことになります。このため、損害賠償の範囲を当事者の合意の範囲に限定する機能を果たすのが、損害賠償の制限条項です。

【例文】
第○条(損害賠償)
本契約の当事者の一方が故意又は過失により他の当事者に損害を与えた場合、当該当事者は、他の当事者に対し契約金額を限度としてその損害を賠償するものとする。但し、天災地変、戦争、公権力、不可抗力による損害はこの限りではない。

 

⑤ 秘密保持

     契約当事者が契約期間中に知り得た相手方の秘密情報若しくは個人情報を、第三者に開示・漏洩することを禁じます。第三者に漏洩すると営業に支障が出る危険のある情報について、秘密を保持するという義務を課すのが秘密保持条項の役割です。

【例文】
第○条(秘密保持)
甲及び乙は、契約期間中に知り得た相手方の秘密情報若しくは個人情報について、理由、目的の如何を問わず相手方の事前の書面承諾なく、第三者に開示又は漏洩してはならない。

 

⑥ 不可抗力

     天災などの当事者の支配を超えた事由によって債務不履行となっても、当事者は債務不履行の責任を負わないとする規定です。

【例文】
第○条(不可抗力)
地震・津波・水害等の災害、盗難、偶発的な事故、又は、甲若しくは乙の責によらない事由によって生じた甲又は乙の損害について、甲又は乙は互いにその責を負わないものとする。

 

⑦ 反社会勢力の排除

     暴力団の資金獲得活動の巧妙化などにより、暴力団関係企業等と知らずに取引を行ってしまう可能性があります。 このため、契約締結後に相手方が反社会的勢力であることが判明した場合には、無催告解除ができるように定めておくことが効果的です。

【例文】
第○条(反社会勢力の排除)
乙は甲に対し、次の各号の事項を確約する。
(1)自ら又は自らの役員が、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
(2)反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本契約の締結をするものではないこと。
2 次のいずれかに該当した場合には、甲は何らの催告を要せずして、この契約を解除することができる。
(1)前項(1)の確約に反する申告をしたことが判明した場合
(2)前項(2)の確約に反し契約をしたことが判明した場合

 

⑧ 裁判管轄

     当事者間の紛争の解決をどこの裁判所で行うかについて合意する規定です。自己の訴訟進行に有利な裁判所を合意管轄として定めておくことがお勧です。

【例文】
第○条(合意管轄)
本件契約から発生する一切の紛争の第一審の管轄裁判所を、甲の住所地を管轄する地方裁判所とする。

 

⑨ 誠実協議条項

     誠実協議条項は、契約者双方の信頼関係に基づき、契約書に定めのない問題等が発生した場合には当事者間の協議でその解決をはかるとするものです。

【例文】
第○条(誠実協議)
甲及び乙は、信義に基づき本契約を履行するものとし、本契約各条項に定めない事項が生じたとき又は本契約の条項の解釈に疑義が生じたときは、誠意をもってこれを協議解決するものとする。

 


 

契約書を重要だと考えているのであればこそ、一度専門家にご相談されることをお勧め致します。
当事務所ではご希望の内容を、法的に有効な文言で反映させ、あなたのための契約書をお作りします。